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「ジングルベ~ル♪ジングルベ~ル♪すっずぅが~鳴るぅ~♪」
ご機嫌な鼻歌まじりで色紙を細長く切っているのは、
悪友門田の妹、ふく子だ。
俺と門田は、輪っかにした色紙を糊付けする係を仰せつかっている。
「潤くん、手が止まってるよ!
サボっちゃダメ!!」
「お前のクラスの飾り付けだろ! 何で先輩の俺が……」
「ボヤくな柴谷、この輪っかを杉ちゃんが首にかけた姿を想像して、今は耐え忍ぶのだ!」
そう、我が高男子憧れのマドンナ、音楽の杉先生は、忌々しくもこのふく子の担任。
ふく子から、25日の終業式後にクラスで行うクリスマスパーティーの準備を手伝う代わりに、
杉先生の首に余興でかけた輪っかを、あとで横流ししてやる、と持ちかけられ、
一も二もなく引き受けたんだった。
杉先生のあの豊かな胸元に、俺が糊付けしたこの輪っかが……。
胸とともに揺れて……揺れて……。
ああ、そのまま糊付けされてしまいたい……。
「ちょっと!ヨダレ垂らさないでよ輪っかに!!」
「あ、すまん」
俺は口元を拭い、イソイソと糊付け作業にいそしんだ。
待望の終業式当日、ふく子はパーティーのあとそのままカラオケに繰り出し、遅くなると家に連絡があったらしい。
折しも雪が降り始め、ロマンチックなホワイトクリスマスの夜。なのに……寂しいよ、杉先生……。
俺は翌朝さっそく、朝陽に溶けたべちょべちょの雪道をものともせず、門田家に押し掛けた。
寝ぼけ眼のふく子は、爛々と目を輝かせた俺と門田を前に、悪びれもせずのたまった。
「あ、ごめーん、学校に置いてきちゃった」
「どこ!? お前のクラス!?」
「……行ったらすぐわかるよ、目立つように置いてきたから♥」
……含みのある笑顔に若干の不安を感じつつも、
俺と門田はルンルンと学校を目指す。
「ジングルベ~ル♪ジングルベ~ル♪すっずぅが~鳴るぅ~♪」
「輪っかはどれも、一度は杉ちゃんが首にかけたってよ!! お前どーする!?」
「ジングルベ~ル♪どーしよっかな~♥」
校門をくぐった途端、俺達は息を飲んだ。
クリスマスツリーがそこにあった。
色とりどりの輪っかが、ふく子のクラス1年5組の窓の外に植わったイブキの樹に、これでもかと巻き付けられていた。
雪が滲み、トロトロに溶けたそれは、
朝陽を受けて白い雪に映え、緑に映えて、
ただただキラキラと……美しかった……。
Fin.
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