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するりと、後ろから伸ばされた雪の腕に、駿はあっという間に抱き締められた。
雪の言わんとしている事は、駿には分かっている。それなのに、わざわざこんな事をしてくるのだから手に負えない。
「こういう事、したいって意味で好きだろって言ってんの」
耳のすぐ横から聞こえる雪の声。今にも唇が触れそうなその距離に、駿は先に釘を刺した。
「キス。してもいいけど、後で殴るよ?」
「なにそれ。してもいいって、マジで言ってんの?」
「殴られたいなら、ね」
覆いかぶさるように抱きついている雪を、駿は横目でちらりと見上げた。その目が、挑発的な色を帯びる。
「それとも、雪は本気で俺にこういう事、したい訳かな?」
すぐ間近にある、雪の頬に駿は自分から口付ける。ちゅっと小さく音をたてたそれに、雪はパッと両手を上げた。
「お前、性格悪すぎ」
「どっちが」
「あ。間違えたわ」
ホールドアップしたはずの、雪の腕の中に、駿は再び捉えられていた。
「性悪、…かな?」
「は? ……ぅん…っ」
駿の声は、途中で雪の唇に飲み込まれた。見開いた目に、楽しそうに目を眇める雪の顔が映り込む。
「っぅ…ん…っ」
雪の口付けは、雪の性格に似て強引で…。透明な糸を引きながら唇を離されれば、駿の頬が赤く染まった。
「っ…っは、雪っ、冗談は…」
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