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市川さんはあまり好きになれない。
〝やりにくいことがあったら俺に言えよ〟なんて言っておいてフォローしてくれなかった遼太郎にも八つ当たりで腹を立て、角を曲がると乱暴に廊下を進む。
絨毯敷でなかったらすごい音がしただろう。
席に戻ると西岡課長の顔は相変わらず画面にくっついたままで、「おーおー遅かったなー」と反応は棒読みだった。
アルミボトルを開けると、プシッという炭酸の威力はあまりなくなっていた。
遼太郎が開けてくれたキャップを手のひらで転がしながら、斜め前方の席を見る。
その隣の市川さんの席も。
溜息をついてボトルを置き、再びパソコンを開いた。
その日、遼太郎と市川さんが帰ってくるまで、私は何度もキーを打ち間違えてばかりいた。
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