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口が利けない美しい男、ティエンを拾ったユンジェは、日に日に落ち込んでいく彼のことをとても気に掛けていた。
ティエンを拾った当初、彼との仲は最悪で、助けてやったにも関わらず、一方的に警戒心と敵意を向けられ、日々彼の我儘に頭を悩ませていた。
今では少しだけ打ち解け、隣に座らせてくれるようになったものの、まだ関係的にはぎこちない。ユンジェは至って普通に接しているつもりなのだが、ティエンの方が自分を恐れているような素振りを見せるのである。
きっと重たい事情があるのだろう。
ユンジェはそう判断し、なるべく気にしないようにしていたのだが、ひとつ屋根の下で過ごしているのだから、やはり彼の存在は気になるところ。
せっかく怪我は完治に向かっているのに、包帯を取り替える度にティエンは浮かない顔をする。まるで、怪我の完治を望まないような素振りだ。
(ずっと傷があるのも嫌だろうに)
変な奴だな。ユンジェは首を傾げていた。
しかし、彼を観察していく内に、なるほど、と思うようになった。
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