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それが分かっているから、ティエンはユンジェの好物を作ってやる。
潰した芋に塩と油を混ぜ、よく練ると、形をととのえ、片手鍋で焼いた。焦げ目がついたところで、葉の器に移す。腹持ちの良い芋餅の完成だ。余った芋は粥状にしておく。
「……芋の焼き物に、芋の粥」
米を主食としている兵達は微妙な顔をしていたが、芋を主食としている農民にとってこれは御馳走他ならない。
さっそく小道具を作っているユンジェの下へ持って行ってやると、子どもは大喜びで芋餅に食らいついていた。
ホクホクの芋餅がお世辞抜きに美味しいようで、ユンジェの食べる勢いは止まらない。
「ティエンは本当に味付けが上手いよな。芋餅も芋粥も、すごく美味しい」
「ふふ。ユンジェの好物だからな。張り切って作ったんだよ。お前はとても美味しそうに食べてくれるから、作った私も嬉しくなってしまう」
「だって本当に美味いんだからしょうがないじゃないか。最初の頃のティエンは、料理もなにもできなかったけど、今じゃ俺より美味い料理を作れるようになってる。これはティエンの特技にして良いと思うよ」
特技。ティエンは少しだけ得意げな気持ちになった。
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