妄想痴漢列車3―トナカイの俺を攫うのは君の役目でしょ?―

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 …でも、一生懸命仕事したのは、いい経験だった気がする。 「開けてもいい?」 「どうぞ」  簡易包装の袋を開けて中を取りだした和樹は、驚いた顔をして俺を見ている。  俺が選んだのは、青と白のストライプのマフラー。和樹、いつもマフラーしてなかったから。それに、深みのある青が似合うだろうなって思ったんだ。  マフラーを持ったまま俺を見ている和樹に、少し不安になる。もしかして、気に入らなかったのかなって思う。あっ、もしかしてニットで首とかチクチクしちゃう人! でも、和樹普通にニット着てるし…。 「あの、嬉しくなかった?」 「あぁ、違う! 嬉しいよ。ただ、偶然ってあるものだなって」 「え?」  なんの話でございましょう?  和樹は少し恥ずかしそうに、クローゼットの中からプレゼントを出してくる。知っている、簡易包装に驚いた。  受け取って、そっと中身を出して俺は「あ!」と声を出した。  出てきたのは俺が送ったマフラーの色違い。綺麗な赤と白のストライプだ。 「実は、秋川にも選ぶの手伝ってもらったんだ。誰かにプレゼントなんて、あまりした事がないし。でも、これを見たら亮二の事を思いだして、似合うだろうなって」 「ははっ」     
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