プロローグ

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プロローグ

 私はなんで生きているんだろう  私はなんで生まれてきたんだろう  薄暗い部屋の中、布団にくるまる女性は、フードを深く被りマスクをはめていた。  ある出来事がきっかけで仕事以外では人と係わることをやめた女性……京香は、そんな事ばかり思っていた。 「まーたこんな薄暗い所に引き込もってさ、よくずっと居られるね」  躊躇なく、部屋に入って京香の部屋のカーテンを開けたのは、京香の唯一の幼馴染みで心を開いている真奈美 「……カーテン閉めて」 「ダメに決まってるじゃん。おばちゃん言ってたよ?今日は全然部屋から出てこないって」 「出る必要ないし……」  布団を頭に被ろうとする京香から布団を取り上げると早く着替えて、と一言 「なんで?」 「一緒に来てほしい所があるから来て、もう夕方だから良いでしょ?」 「……他の人誘えば良いじゃん」  外出たくない。とベッドから動こうとしない京香に溜め息を漏らすと無理矢理引っ張ってベッドから引きずり出す 「京香じゃないとダメなの」 「なんで……」 「ライブハウス、前行ってみたいって言ってたじゃん?」 「……それはだいぶ前に言ったやつ」 「マスクしてて良いから、ライブハウスだから薄暗いし、顔なんか見られる事もない」  一回行ってみよ!とめげずに誘う真奈美に深い溜め息をついた京香は、フードを外すと小さく分かった。と頷いた。  生活出来たらそれだけで良かった  人と人の繋がりなんて脆いと思っていた  とあるライブハウスの控え室で鏡に映る自分の顔を見つめたまま黙り込む男の周りでは、男のメンバーらしき人物が二人で話していた。 「自分の顔を見て惚れてんのかぁ?」 「……うるさい黙れ」 「相変わらずだな」  鏡に映るメンバーを睨み付けて、低い声で言い捨てた男に可笑しそうに笑う二人に表情を険しくさせる 「もうすぐ本番だからちゃんと笑えよ」 「それぐらい分かっとるわ」  本番前からうるさい。と関西弁混じりでまた言い捨てるとゆっくり立ち上がり、二人を見ると 「本番の時、笑えないとかプロちゃうやろ」  そう言ってわざと笑い掛けてやれば、よろしく頼みますよ。慶之さんとスティックを手に肩を叩いたのは、ドラムを担当する早田(はやた)蒼汰(そうた)で続けて、男に笑い掛けて控え室を出ていったのは、ボーカルを担当する赤碕(あかさき)裕(ゆう)  控え室を出ていった二人の後ろ姿に怠そうにまた溜め息を漏らした。
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