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「その表現はどうなんだ」
「押し切られてるでしょ? 兄さんって、けっこう押しに弱い部分があるから」
楽しそうにルカはファウストを弄り始めた。ファウストはタジタジだ。そしてそんな兄弟の様子を見ているランバートは、実に微笑ましい気分になる。
「あっ、ルカさん一つお願いが」
「あっ、はい。なんでしょうか?」
「実は使っているものがそろそろ無くなるので、一つ注文をお願いしたいのですが」
ふと思い出したランバートはそう言った。休みの日や酷く汗をかいたときには少量の香水を使う。臭いがきつくならないように少量ずつ使っているから減りが遅いが。
ルカの瞳が途端にパッと輝く。そうして出してきたのは一冊のノート。それをめくると、ランバートの項目が出てきた。
「以前の香水はどうでしたか?」
「えぇ、好きでした。時間が経つと少し甘くなって、だからと言って甘ったるくはなくて」
「それは良かったです。ランバートさんはいつもシトラス系の爽やかな物を好まれるので、少し甘めも挑戦したくて。もしもお気に召さなかったらと、ちょっと不安でした」
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