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神木の表皮をぼこぼこと浮き上がらせ、即席の階段を作り出してこちらに降りてきたファーグスに用件を伝えてみる。
彩楓の高校受験や合格祝いなど、NPCには馴染みのなさそうな部分はぼかした説明だったが、それでも意図は十分に伝わったらしい。
ファーグスは「なるほど」と手を打つと、表の泉を指し示した。
「そういうことでしたら、喜んで提供させていただきますよ。お二人には森を救っていただいた大恩もあります。僅かばかりでも報いられるのならば是非もありません」
「そんなに畏まらなくても……それに俺達だけで戦ったわけじゃないし」
ちょっとしたお願いが随分と大仰に取られてしまったが、魚を捕る許可が下りたのはありがたい。
「それで、魚を捕るのはいいのですが、どのようにして捕るつもりなのですか?」
「一応竿は持ってきたんだけど……」
相変わらず膝の上にあるルナの頭を左手で撫でながら、右手で竿を振るような仕草をしてみせる。
するとファーグスはむぅ、と唇を引き結び、右人差し指を下唇に付けて考え込むような所作をとった。
「失礼ですがライトさん、釣りの心得は?」
ファーグスの問いに思わず「現実でなら少々」と答えかけてしまってから、慌てて「ありません」と答える。
現実世界でならば昔父親にサバイバル実習のついでにある程度のアウトドア遊びを教えられたので餌釣りと簡単なルアー釣りならばある程度できるが、生産系スキルとして≪釣り≫スキルなどというものが存在する世界ではそんな知識や技術はものの役に立たないだろう。
役に立つとすれば、ある程度熟練度が上がってシステムアシストだけでは誤魔化せなくなってからのはずだ。
流石に今からそこまで熟練度を上げられるような時間はないので、やるにしてもスキルは一応習得するだけで後は運とシステム任せになることだろう。
「となると、差し出がましいかもしれませんが釣りという手段に拘らないというならば私にお任せしていただけませんか?」
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