運命と共に堕ちる

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「渓谷の方にさ、その手の話って集中してるんだ。だから俺はファルスの方からずっとぐるりと渓谷を回ってる。アジェと一緒の間は行けなかったけど、俺はそっちに行くつもり」 「鳥人に会いたいんですか?」 「そうだな、できれば自分が飛んでみたいんだ。上から見たらきっとこんな世界小さく見えるんだろうなって、そんな事ばっかり考えてた」 「子供の頃ですか?」 「そうだな。今も、そう思ってるけど」 抱えた膝に顔をうずめて彼は呟くようにそう言った。 「渓谷は盗賊の隠れ家なんかも多くて危ないと聞きますけど…」 「あぁ、それはな。でも、そういう奴ばっかりじゃねぇよ、行き場を無くした俺みたいなのもいくらでもいる」 「一人で怖くはないんですか?」 「もう慣れたよ」 とりとめもなく彼の旅の思い出を聞いている内に、いつの間にかナダールは眠りの淵に落ちていた。 はっ、と気付くと傍らでグノーが激しくうなされていた。 「い、やだ…やめっ…」 「グノー、大丈夫ですか!?グノー!!」 彼の身体を揺り起こすと、物凄い勢いで手を振り払われ、起き上がったと同時に剣を突きつけられた。 「っは、あ…」 「危ないですよ、大丈夫ですか?」 その剣を避けて、顔を覗き込んだら驚いたように彼はその剣を取り落とした。 カランと金属の転げる音がして、その音に我に返ったのか彼は一言「ごめん」と呟いた。 「怖い夢でも見ましたか?」 「あ…あぁ、なんでもない」 「なんでもない、って感じではありませんでしたけどね」 「お前には関係ない」 彼はまたふいっとそっぽを向いてしまう。 「まぁ、そう言われるのは分かってましたよ」 言って彼の手を引いた。油断していたのか彼の身体はすっぽりナダールの腕の中に納まってしまう。 「なっ!なに!?」 「悪い夢は忘れてしまうに限ります。嫌かもしれませんけど、人肌の体温は意外と落ち着くものですよ。寝られるまでこうしてますから寝てください」 「こんな状態で寝られるか!」 「では、子守唄でも歌いましょうかね」
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