プロローグ

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 その日はクリスマスイブだった。  駅前には大きなツリーが飾られ、並木道にはイルミネーションが(きら)めいて、過ぎ行く人たちは瞳を輝かせてみんな幸せそうに笑っている。  きっと、世の中では一年中で一番幸せな日なのかもしれない。  だけど、私は独りぼっちで歩いていた。  本当はパパとママとレストランでお食事をするはずだった。クリスマスイブは日曜日だったし、いつもは忙しいお仕事も休みだったから。  だけど、急にお仕事になっちゃった……。  仕方がないよね、パパは産婦人科のお医者さんでママは助産師さん。  自宅のある敷地内に病院はあるから、急な患者さんが来たらすぐに駆け付ける。  仕方がないって分かっているよ。  それでも楽しみにしていたから、やっぱりガッカリしちゃうの。  家に居ても独りぼっちだから出てきちゃったけど、それでもやっぱり独りぼっち……。
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