抱きしめられるこの今を

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 空が唸るような音を立てて見下ろす。黒い雲は膨らんだりへこんだりしながら波打っている。雲は何らかの物質が凝集(ぎょうしゅう)しているかのような異質さがあった。雲の表面に溝のようなものが見られ、不気味極まりない。  あれが落ちてきやしないかと飛躍した不安がよぎるが、そんな心配をしたところでどうなるものでもない。  ラピは不吉な雲を捉えながらバイクを走らせる。サモン、氷見野たちは坂道を下っていく。無事だった道路を選んでチャペルトンへ向かっていたが、放置された落石や亀裂の入ったアスファルトがバイクの速度を落とす要因となっていた。 「事前に予想していたチャペルトンに現れたんだろ? まだ救出できないのか?」  バイクを運転するサモンは司令部に投げかける。 「それが、ちょっとややこしいの。敵はチャペルトンに現れたんだけど、複数の運び屋だった」 「どういうこと?」  オルビアはフォスター小官の説明をいまいち理解できずいた。 「運び屋はジャマイカに複数いたの。おそらく、不法移民や行方知れずの人たちが飼い殺しになっていたんじゃないかしら。まともな治療もされずにね」  オルビアを含め氷見野もブリーチャーたちの狙いがよく分からず、フォスター小官にどう相槌(あいづち)を打てばいいのか困っているような感じだった。フォスター小官は彼らの無言をいいように受け取ったらしく、話を続ける。
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