落花流水

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健さんが渋々俺から離れると、 丁度そこに椿さんが来た。 「あれぇ?椿さん、まだ出て行ってなかったんだー」 「おい、健!」 「出て行くって言ったじゃん。ひょっとして嘘ついたの?  あ、じゃあリンちゃんが好きって言ったのも嘘だったりして」 酷い。 健さんはからかってるつもりかもしれないけど、 この言い方は良くない。 椿さんが、傷つく。 そう思った瞬間、勝手に手が動いて・・・ そばにあったクッションで、 健さんを殴っていた。 「いったーい、リンちゃん酷いよぉ」 「・・・・・・ごめん、なさい。でも」 「でも?」 「・・・そんなこと、言う、健さん・・・い、嫌、だから」 健さんが、ぽかんとした顔で俺を見ている。 トシさんも、椿さんも。 今なら、この状況なら言える。 言わなきゃいけない。 「お・・・俺、が、ここに来た、とき、ボロボロだった、とき・・・・・・」 3人が俺をじっと見てる。 どうしよう。 やっぱり、言えない。 ・・・あれ? 気がつくと、椿さんが俺のすぐそばにいた。 トシさんも健さんも、優しい顔をしている。 息を吸って、吐いて、吸う。 ・・・大丈夫。 「椿さんも、トシさんも、健さんも・・・俺、なんか、を、温かく迎えて、くれて。  ・・・だから、だ、から・・・」     
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