落花流水

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「リンちゃん」 リビングでテレビを見ていると、 健さんがやってきた。 昨日のことがあったから、 ちょっと、顔を合わせづらい。 だけど、俺が動揺している間にも 健さんはスタスタと俺に近づいてきて・・・ 「――!?」 俺を、ソファに押し倒した。 「ねえリンちゃん。僕と・・・しよ」 「っ!」 健さんはニヤリと笑って、 俺のシャツを捲し上げる。 も、もしかして、 『あいつだって椿さんと同じくらい・・・リンのこと、好きでしょうから』 昨日、トシさんが言っていたことが本当なら、 健さんは俺のことが好きで、 今、俺を力尽くで手に入れようとしているのかもしれない。 「・・・け、健さん!」 「ん?ダメ?・・・いいよね。椿さんともしてるんだから」 「・・・・・・っ」 それを言われると、何も言い返せない。 でも、違う。 健さんのことは好きだ。 だけど家族としての隙であって、 椿さんへ対する好きとは全然―― 「はい、そこまでだ」 「いてっ」 コツンと音がして、健さんの身体が引き剥がされる。 そこには、お玉を持ったトシさんが立っていた。 「純粋なリンを弄ぶな、健」 「べつに、もてあそんでないしー」 「・・・夕飯、抜きにするぞ」 「えーっ、もう、わかったよ」     
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