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怜央と付き合っていることは、まだ、みんなに内緒にしている。
お父さんに騒がれたらイヤだし。
だから、翌日も、玄関チャイムは鳴らさずに、LINEで到着を教えてくれるようにお願いした。
「友だちの家、行ってくる」
こたつで箱根駅伝に見入る家族にそっと告げ、家を抜け出した。自転車の傍らに、怜央が立っている。片手を上げて、ちょっと照れくさそうに髪を掻き上げた。
「あ、えっと……自転車、とってくる」
付き合うことになって、初めてのデートだ。
ああ、どうしよう、しゃべり方がわからない。
自転車にまたがるのも、なんだか緊張する。服は、スカートの方がよかったかな。
「ちょっと寒いとこなんだけど」
と、怜央が振り返る。ちょっと髪を染めたようだ。細い吊り目に似合う茶色い髪が、冬の太陽を受けて輝く。サラサラの髪は先輩たちからも人気が高い。その上、小柄だけどバスケ部のキャプテンだ。
「遠い?」
「チャリで20分くらい」
「えー20分?」
怜央は、国道に入り、川沿いに出る道を選んだ。マンションと民家、工場が入り混じって建つエリアだ。ゲーセンやカフェのある駅前とは反対方向。確か、怜央の家は近い。
家に招待してくれるのかな……心の準備ができてない。
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