危ない新婚生活

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「紗和…もしかして昨日松下さんと一緒に寝…」 繭子が綺麗な顔を少し歪ませる。 『ぎゃー!やめてよ』 恐ろしい事を言いかけた繭子の口を慌てて塞ぐ。 『ナイ!ナイから!』 必死で否定すると、繭子がわかったからと目で訴えながら数回頷く。 「じゃ結局、松下さんの部屋で住むんだ?」 『うん…』 そう、既に引っ越し終了。 ついさっき荷物運んだばかりなのに、今更家に帰れるはずもなく… 空き部屋は数えるのも面倒な程沢山あるのに、あたしの新しい家は最上階と決められていた。 だだっ広い部屋にいくつもの最新家電。 きっと皆が憧れる大きな窓に切り取られた見晴らし最高の景色。そんなの何の文句もつけようがない。 っだからって同じ部屋で暮らすなんて無理! そう思って何とか別々にしてもらおうと響に頼んだけど 「俺等が一番騙し通さなきゃならないのは親達だって言ったよな。別々に暮らして、親達が来た時どうすんだよ、来る度一々細工すんのか?面倒臭ぇ」 そう…、言われると… 確かにあたしは響に一目惚れして結婚した事になってるし、離婚するまで計画に気付かれちゃダメなのはわかってる。 響の言う通り、いつお母さん達が訪ねてくるかもわかんないし、細工した所で上手くいく保証もない。 ……このままあたしが文句言った所で、どうしようもないのかもしれない… だったら 『わかった、一緒に暮らす。でも寝室は別々、これだけは絶っ対譲らないから』 完全に信用してる訳じゃないからと車越しにした主張は、当たり前だろとあっさり認められた。 更にえ!?という表情のあたしに、お前の考えてる事当ててやろうか?と付け足す。 「まだ俺に何かされるとか思ってんだろ?安心しろ、興味ねぇし」 そう言って車のドアを閉めると、マンションの入り口へと歩き出した。 『安心出来ないから言ってんでしょ!』 興味ないと言ったその口で、何度あたしに危機感を持たせたのか忘れたとは言わせない。 どんどん遠くなる後ろ姿にバカ響!とぶつけながら、あたしの荷物を持って行ってくれてる事に気が付いた。 …だから、 意地悪なんだか、 …優しいんだか…。 .
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