第12章 縋りつくもの

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 出勤してきた鈴音が近づいてきたかと思いきや「お願い!」と合掌され、優奈はあわあわとしてしまう。  ダブルデート。今回はきちんと、瑞生と。  それはとても嬉しいことで頷きたかったのだが、優奈はゆるく首を横に振った。 「ごめんね鈴音ちゃん、今週は、その」  瑞生はしばらく一緒に帰れないと言っていた。  ということは、毎日夜遅くまで仕事があるのだろう。  日曜日は完全にフリーで、仕事がないかもしれない。  だから出掛けることができる可能性はあるし、できれば鈴音たちとお出掛けしたい。  けれど、それよりも瑞生に身体を休めて欲しかったため、優奈はお誘いを断った。 「そっかあ……じゃあ、来週はどう?」 「えっと……来週も、厳しいかもしれなくて……。あっ! あのね、ダブルデートがしたくないってわけじゃなくて」  しょんぼりとしている鈴音に慌て、優奈は必死に言う。 「むしろ、できたら嬉しいなって思っているんです。だから、今度……私から誘っても、いいですか?」  この言い方から鈴音は今、二人は忙しいのかと解釈してくれたらしく、彼女は了解と明るい笑顔を見せた。 「うん、待ってるね」 「ありがとう、鈴音ちゃ」 「優奈、なんの話をしていたんだ……?」 「み、瑞生さん! ええと、それは……」 「ん……?」  就業時間前であったのだが、わからないところがあるから教えて欲しいと質問してきた社員に、ていねいに答えていた瑞生。  そんな彼はわたわたとしていた優奈をたまたま視界に入れてしまったため、社員に説明をし終えてからすぐに彼女のもとへと行ってしまった。 「そ、その」  ダブルデートの件を瑞生に話したら、鈴音は先ほどのことを全部言ってしまうだろう。  そうしたらきっと彼は今週の日曜日仕事が入っていなければ、オーケーを出してしまう。  ということは、だ。瑞生は貴重な休みに、身体を休めることができなくなるというわけで、優奈はなんとしてもそれを阻止したくて、言葉を詰まらせた。
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