第12章 縋りつくもの

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 瑞生はすべてのことに対応できるから、みな頼ってしまう。  近寄りがたい空気を、つねに纏っている瑞生。  だが、仕事の質問や相談には真摯に答えてくれるし、的確なアドバイスをくれる。  そうやって面倒くさそうな顔をせず、きちんと向き合ってくれるから、瑞生はみんなからの信頼が厚い。  口調は淡々としているし駄目なことは駄目だと言い、冷たく切り捨てることだってある。  でも、みんなから「あいつは冷たいやつだ」とか、「調子に乗っている」だとか、反感を買ったりはしていない。  それはきっと、瑞生が誰よりも仕事に対してプライドを持ち、やらなければいけないこと以上のものを、しているからだ。 「天宮くん、すまない。今日の十四時なんだが、B会議室に今からメールで送る資料と、お茶出しを八名分お願いしてもいいか?」 「はい! かしこまりました」  来訪者対応が終わり戻ってきていた瑞生は、席に着いたまま優奈にお願いする。  彼のデスクにはたんまりとチェック資料が溜まっており、大変そうなのに普通の顔をしてこなしていく瑞生を見て、優奈は眉を下げた。  ――あんなに業務があるのに、突然十四時に会議が入ってしまったんだ。  瑞生であれば、きっとそれくらいのことはどうでもなくて、あまり残業せずに終わらせられる。  そうわかっていても心配してしまい、だからこそ優奈は自分が今できる瑞生のサポートを、一生懸命やろうと思った。  もともと、優奈は一生懸命やっているのだが。    瑞生のサポートに、自分のもともとの業務。  優奈だって充分忙しくて大変なのだが、これぐらいなんてことないと、てきぱき動いて誰にも頼らずさばいていく。  こういったところは、本当にそっくりである。  そうやって仕事をしていたからか、お昼休憩の時間まであっという間であり、優奈は瑞生とコンビニでお弁当を買ってきていた。 「本当に、コンビニでよかったんですか?」 「ああ、別にいい。……レストランだと、他にもひとがいるだろう?」
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