第二十一章 生きている森

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 二回目の白米が無くなると、係員も不思議に思ったのか、周囲を見ていた。でも、大量の食べ残しがあるわけでもない。ちらし寿司も無くなったので、今度はパスタに移動してみた。でも、どうにも米の方が好きで、オムライスに移動する。  残っている食材が少なくなっていたので、後から来た人は、並んでしまっていた。すると、氷渡と芥川が、比較的空いていたデザートのコーナーから、皿に一杯のケーキを持ってきた。でも、甘いものが好きな大慈が、皿の端に座ると、ひたすら食べて完食してしまった。 「アイスがあるけど」 「俺、アイスはあまり食べない」  そこで、氷渡は再びデザートを持って来ると、大慈に渡していた。 「あ、チャーハンが入った」  芥川が、俺達のペースを把握したらしく、丼を持ってゆくと、山盛りでチャーハンを持ってきてくれた。 「でかした!芥川!」  すると、調子に乗った芥川が、ミートボールを山盛りで持ってきて、人目を引いてしまっていた。 「少し休憩ね。目立つとまずいから」 「休憩なの?終了ではなくて?」  そこで、俺が着ていたジャージの中学の、卓球部が襲われたなどの情報を、氷渡に伝えてみた。 「谷津か……情報が速いよね……」  犯人まで割り出しているが、まだ警察には届けていない。 「俺の会社も関わっていそうだ」  内臓の不法投棄と、泥人形が繋がってしまいそうな気がする。 「そのさ、泥人形ってスゴイでしょ。慧一さんに作って貰ったけどさ……」  泥人形のローションの方であろう。先程、氷渡はそれでシテいたのだから、凄さに実感が籠っていた。 「生きている土だからね。それで、相手の情報をキャッチして、擬態する」  相手の望む動きをしてしまう。 「女性には使用しないでね。生きているというのは、菌とか微生物で、全くの無害ではないからさ」  土と一言で片づけられない、そこには様々な物質がある。 「え、光二に使用してしまったけど」 「それは平気。排出が早いから」  そこで、芥川が真っ赤になっていた。やっと、意味を把握したのであろう。 「芥川は、決まった相手はいるの?」  壱樹村では、×の場合は、相手が同性の方が許される。それは、子孫を残すと、処刑されてしまうせいだ。子孫を残さない同性の場合は、周囲も安心していられる。 「いるといえば、いるかな……」  付き合っている訳ではないが、決まった相手がいるらしい。
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