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第3話
外は日が落ち空が暗く、高層マンションの最上階廊下からは町の夜の姿が見渡せた。こんな時間に外を出歩いた経験がほとんどないのでドキドキする。隣にとんでもねえ美人がいるから尚更だった。
「依央さん、部屋に残してきてよかったんですか?」
「平気。合鍵持たせてあるから、好きな時に帰るわよ」
ヒールを履いた未与子さんは僕よりも少しだけ顔の位置が高い。ただでさえ長い足が強調されて立っているだけでモデルみたいな雰囲気が出そうなところなのに、どことなく脱力感が漂っている。エレベーターの到着を待ち階数表示の点灯を目で追う様子は口が空いてしまっていてもう完全に間抜けだ。
優等生で社交的、何事に置いても隙が無い副島依央とはまるで重ならない。そのせいで今一つモチベーションが上がらなかった。「依央さんとデートだ」という気持ちになれない。
(そりゃそうか。別人なんだもんな)
このデートの目的は台本の用意という一点に絞られた。或いは未与子さんの社会復帰。
「それで、これからどうする? 何かプランはあるの?」
聞かれて、首を振る。
「特にないです。明日明後日は絶対どこか出かけようと思ってはいるんですけど」
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