3.ここから

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久々に見る彼女は、 相変わらず今どきのお洒落な女のコで。 私がすればオカメインコにしか見えない その濃い目のチークもとっても可愛くて。 空になったグラスを持つ指には、 美しく彩られた爪が輝いていた。 いいなあ。だってほら、私は営業職だし。 直接納品したり、倉庫整理をするから、 マニキュアなんか塗っても無駄なのだ。 大量のダンボールを開けたり、 それを潰して捨てたり。 輸入モノって結構、箱が劣化していて、 触ると手が真っ黒になることが多く… 「ちょっと、何とか言ったら?! この性悪女ッ」 って、今はそんなことを 考えている場合じゃなかったみたいだ。 その瞳の奥を覗くと、 私に向けられた憎悪が痛いほど感じられ。 自分の言いたいことよりも、 舞美ちゃんが欲しい言葉が何なのかを 延々と探し続けていた。 店の人が慌てておしぼりを数枚、 持って来てくれる。 それで頭を拭いていると、 いつの間にか芳と舞美ちゃんが 激しい口論を始めた。 「お前、いったい自分が何したのか 分かってんの?!早く雅に謝れよ!」 「やだっ、私は絶対に悪くないッ。 だってそうでしょ?! 人の彼氏を平日どころか休日も独占して、 平気な顔をしてるんだよ、この人はっ!」 そして繰り返しこう言うのだ。
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