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弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》01
黒柳迷斎。
性格が悪く、口が悪く、態度が悪く、意地が悪い。おおよそ、人間らしい暖かみも正義感も道徳心もない。そんな迷斎さんに私を含め、何人かの人間は救われていのは言うまでもない。
ダークヒーロー。
色で例えるなら、黒がお似合いの迷斎さんにはうってつけの形容詞。それに、ヒーロー特有のカリスマ性も合わせ持っているが、残念なことにその活躍は決して表に出ることはなく、おそらくは一生を日陰で過ごすことになるのでしょう。
それが、私の知る迷斎さん。
ここまで物語が進んでいながら、私はいまだに迷斎さんについて、知っていることがそれくらいしかありません。
年齢は?
好きな食べ物は?
あの大きな屋敷にいつから住んでいるのか?
どのような人生を歩んで来たのか?
そもそも、黒柳迷斎とは本名なのか?
そして――。
なぜ、怪奇噺を蒐集しているのか?
尊敬と畏怖の念を込め『アウトコレクター』と呼ばれるまでに至ったのには、どのような経緯があったのでしょうか?
考えれば考えるほどに、知れば知るほどに、疑問が波の様に押し寄せて来て、私の好奇心をくすぐるのです。
これは、黒柳迷斎を知るための物語です。
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