第四章 神の降りる島へ

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「アイツ、月讀命、だったみたいだ。そうだ――私は月讀命だって言って、俺の体を出ていったから」  薫は目を丸くする。 「……うそ、だあ」  あれだけ手こずっていたのだ。そんなふうにあっさりと出ていくとは、とても思えなかった。  真偽を問いたくて瑛太を見つめる。瑛太は、実は嘘が苦手なのだと思う。だから、やましいことがある時には、黙って返答自体を避けるか、人の目を見ずに答えるのだ。  だが、彼は大きく息を吸うと、薫をまっすぐに見つめ返した。 「嘘じゃない。ここは、月讀命が地上に降臨した土地だと言われている。これほど記憶を刺激する場所もないだろ」 「確かに、そうだけど……」  カミサマも言っていた。これほど神が降りるのにふさわしい場所はない、と。
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