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ここで頼む物は決まっている。
俺の芋焼酎に、雪乃の梅サワー。
トマトとモッツァレラのサラダに、手羽先の唐揚げ。どて煮と、枝豆と、じゃが餅コロッケ。揚げ出し豆腐もアンチョビたっぷりピザも忘れてはいけない。
ここでは国籍も何もないのだ。統一感もお構い無し。二人が食べたい物を頼んでいくと、こうなってしまう。
久しぶりに来た居酒屋で、久しぶりのメニュー。
そんな些細な日常の幸せが、どれほど大切なものか、俺はつい最近気付いた。
当たり前は当たり前じゃない。
日常はいつ非日常へと変わるか分からない。
それは変わってから初めて分かるのだが、そう気付いた時には遅い。
不意にそんなことが頭を過ぎり、慌てて頭を振った。
「何してるん?」
「いや、酔ったなと」
「二日酔いやったもんねぇ」
クスクスと笑う雪乃は、実は俺よりも酒に強い。
学生の頃に飲み比べで負けてからは、張り合わないことにしている。
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