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 山の中に忽然とあらわれた造衣所を見たとき、私は声にならないくらい驚きました。  3日間、一緒に旅をして来た15人の少女達も、同じ気持ちでしたでしょう。  私たちの故郷も山の中ですが、御一新から3年経っても、役場の建物が新しくなったのと、洋装の人がちらほら見えるくらいで、風景に大きな変化はありませんでしたから。  工場の敷地を囲む塀は、左右にまっすぐ、どこまでも続いています。  馬車が悠々とすれ違えるくらい広い門を入りますと、立派な煉瓦造りの建物が何棟も並んでいます。  今日から10ヶ月間、私たちはここで、お国のために氷衣(ひごろも)を作るのです。  天人による御一新から3年。  さまざまなことが、非常な勢いで整えられていきました。  伝え聞くところによりますと、都には煉瓦造りの建物が立ち並ぶ通りが作られ、道そのものにも煉瓦が敷き詰められ、蒸気機関の車が縦横無尽に走るようになったそうであります。  一方、地方には様々な工場が建てられました。この辺りは寒くて、雪も多く降りますので、氷衣を製造する造衣所が建てられ、近隣の村から工女が集められたのであります。  私たちの村からは、12才から18才の女子が選ばれました。  造衣所に着いた日、お国のためにご奉仕できるという喜びで、私の胸ははち切れんばかりでした。
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