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瞼に冷たいものを感じて目を覚ました。
「爆睡しすぎだろ、帰るに帰れねーし!ほら、そろそろ戻ろーぜ」
「ん、っ」
「菫待ってんじゃね?」
「わ、やべ!どれくらい寝てた?鼓が部屋戻っても居ねーのが悪ぃ。探してくるって言っては来たけど……つーか人の彼女を呼び捨てにしない事!」
「はいはい、菫さんね」
「よろしい」
ビーサンは履かず手に持って立ち上がった。
「おしゃ……戻りますか」
辺りはうっすらと明るくなりつつある。
砂浜が素足に心地良い。
「今日も快晴だな」
「ん」
次第に海面から太陽が昇り始めた。
一直線にオレンジ色の光が広がる。
「やっべ!超綺麗じゃね?」
「ん、綺麗だな」
「菫さんと見たかったなー」
「俺だってオマエとで残念だよ」
そう言う俺らの表情はガキの頃と変わらない、
柔らかい笑顔。
優しい空気が朝の真新しさと混ざって気持ちが良い。
「なぁ、鼓、俺の瞼にキスした?」
「ぶはっ!なに言ってんだよ馬鹿か?」
鼓が笑うから俺もおかしくなって笑った。
2人で。笑いながら海辺を歩き宿に向かった。
今年の夏はもう少しで終わりだけど、
「また来年も此処にこよーな!鼓」
「おうよ」
おしまい
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