3.未来の糸

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 土曜日の午後。授業が終わった後、俺とヤス、そして佐合さんの三人で昇降口を出て、校門へと向かう。俺たち同様、帰宅する連中でごった返していた。 「今日の午後はデートってか」 「いいなぁ」  二人が顔を見合わせて、ウフフと笑う。 「そういうお前らだって、これからデートだろっ」  ちょっとだけ恥ずかしく思ったせいで、声が少し大きくなる。そのせいで、校門へ向かう他の生徒たちの視線が自分たちに向いてしまった。 「もう、要、声デカい」 「デートじゃなくて、一緒に塾の見学に行くの」  元々、佐合さんが通ってた学習塾に、ヤスも一度、見学しに行くというのだ。ヤス自体、自分の学力にあった大学に進学するつもりだったみたいだけど、できるだけ確実に、ということで、佐合さんの説得もあってか、試しに行ってみることにしたのだという。実際は勉強どころじゃないんじゃないの? なんて意地悪なことも考えてみる。でも、佐合さんが許さないかな、とも思った。
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