キミにバツ

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キミにバツ

「……あンの堅物オトコッ!」 オトコのくせにチマチマと! ――って言ったら、差別的発言だと撤回を要求されるな。 頭の中まで毒されているようで、ほとほと嫌になる。今回こそはと自信満々で差し出した原稿を、すげなく却下した男を思い出し、菊池眞祐子は鼻息も荒く自席についた。 「ええっと、今度はなんだって?」 上司がOKしたはずの原稿は、ブルーのインクで事細かく修正指示が入っている。 まず、このブルーのインクが気に入らない。校閲者なら、赤でいいじゃないか。見にくいったらない。 赤色にしてくれと注意――できるような立場でもないので「依頼」した方がいいのかと悩みながら、早1ヶ月経ってしまった。 年明けにアパレルメーカー・ルーチェットに転職してからというもの、眞祐子は叱られっぱなしだった。それも、上司でもない他部署の役職としては同等の人物に。 それが、風見遥だった。
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