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でも何もせずに二十歳まで生きられるかもわからなくて寿命を待つくらいなら、例えこの手術で死んだとしても生きられる方に賭けたかった。
私の命を賭けた十時間の心臓移植手術は無事成功し、一週間後には一般病棟、一ヵ月後には病院生活から抜け出せれた。
「奈々と学校に通う日が来るなんて」
そう言って隣で涙ぐんでいるのは、私が元気だった頃までよく遊んでいた近所に住む友達の茜ちゃん。
入院しているときも彼女は定期的に会いに来てくれた。
「一年遅れだけどね」
私は茜ちゃんとは同い年。
でも私は心臓のせいで高校も皆より一年遅れで入学した。
今から通うことになる大学も茜ちゃんと同じだが、彼女より一年遅れだ。
心臓移植からもう三年。
心臓移植後十年の生存率は九十パーセント。
拒絶反応も無く、私は無事に生きている。
薬を飲み続けなきゃいけなかったり、生物が食べれなかったりとかはあるけれど、普通の生活は送れる。
「奈々は何かサークル考えてる?」
「うん。ボランティアのサークルに入ろうと思う。今まで沢山の人に助けて貰ったから今度は私が誰かを助けてあげたい」
「奈々らしいよ」
今まで私を助けてくれた人のためにこれからは生きたいと思っている。
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