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セレイが周りを見渡すと、同じような年齢の少年が一人、更には若干年上の少女が一人と、その少女に抱かれた幼子らしき姿が見えた。手足の拘束こそはないものの、簡素かつ粗末な貫頭衣を着せられ、その上、足には錘付きの鎖が取り付けられている様子から、皆、やはりどこからか囚われてきたのだろうか。
四名の少年少女は、何か罪でも犯したのだろうか。
それは違っている。
少なくとも、彼女たちを馬車に閉じ込めた輩が、扉を閉める折に見せた、邪な笑みを浮かべたところから、奴等こそが悪人であることには違いはなかった。
更に云えば、それらの少年少女には共通の特徴があった。
それは、人間とは明らかに異なる存在であると云うことだ。
幼子を抱く少女はその耳、手足に見える特徴は犬系のそれに近く、抱かれる幼子は、獣ではないものの、明らかに耳が人族よりは長く、何処か妖精と呼ばれる存在を思わせる、小柄で且つ華奢な体格をしていた。
もしかしたら、幼子ではないのかも知れない。
片隅、ふて腐れた表情で壁を睨む少年は、こちらは白い毛並みで覆われた猫類のように見える。
そう、ここに居るのは、全て[人間ではない]者たちだった。
「(……みんな、捕まっちゃったんだ。アタシと同じように……)」
初めて見る[異種族]に、哀れみを憶える少女だが、そう心の中で呟いたセレイこそ、この中では最も変わった容姿をしていた。
まず、このセレイだけが唯一、履物を支給されていない。
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