予感。

2/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 そして放課後。学校の裏山にタクヤは一人で立っていた。  目の前にははるか昔に作られ、もはやその存在はほとんどの人が知らないであろう古びた(ほこら)がある。  タクヤは、その祠を守るように生い茂る大きなご神木の根元にカバンを置き、中から取り出したウェットティッシュで丁寧に手を清めると、祠に向かって二拍二礼した。 「神様、予感がするんだ。きっと、今日なんだって。俺はこの日をどんなに待ち望んだか……。幼いころからこの日をずっと夢見てきた。周りの大人からは呆れられ、友達からも馬鹿にされ続けて……正直神様にも見捨てられたんじゃないかと思う日もあった。けど……けど、今日、今日という日を迎えられて俺は本当に嬉しいんだ。あきらめないでよかった。絶対うまくいく、その自信がある。だから、神様。俺を見守っていてくれ」  そう言うとタクヤは右向け、右をしてその場に座り、しばし座禅を組んで再び気持ちを落ち着かせる。意識すべきは脳天と下腹にある丹田だ。  感情の波を落ち着かせると目はとじたまま徐に立ち上がる。  両足を肩幅に開いた自然体で大きく息を吐きだし、次には反り返るようにして全身で山の気配を取り込む。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!