缶コーヒーと遠回りの夜

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缶コーヒーと遠回りの夜

「ああ、嘘でしょう?」 私は、駅の電光掲示板に目をやり、ひとり呟いた。 雪の為、終日運休。 バスターミナルに長い行列が出来ていた時点で嫌な予感はしていた。 あの行列に並んで、果たしていつになったらバスに乗れるだろう。 たかが3駅だ。 私は、意を決して歩き始めた。 歩いて帰るなんて、久しぶりだ。 学生の頃は、平気で歩けた距離も、あの頃とは違うパンプスで歩くことと体力を考えると気が遠くなってしまうが、あの寒さの中、いつ乗れるかわからないバスを待つよりはマシだ。 さすがに、しばらく歩いていると、パンプスの中に雪が入ってきて、足がジンジンしてきた。 これはヤバイ。このままでは、凍傷になってしまう。しかし、この時間ではもう、開いている靴屋などなく、仕方がないので、どこか温かいところで暖をとろうとあたりを見回してみるが、真っ暗な道が続くばかりで何も無い。 「あれ?」 私は、立ち止まった。 いくら方向音痴の自分でも、道を間違えるはずは無い。 このあたりは、コンビニもファミレスもあったはずだ。 ぼんやりしていて、一本道を間違えたか。 それにしても、この道は、一度通ったことがある。 遠い昔。 どこだっけか?     
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