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『これ以上暴れたら、全部ここでバラすぞ』
居酒屋でそう囁かれた時と同様に、見下ろしてくる悠次の目がいつになく感情的に揺れて、イラついた様子を見せる。本気とも冗談ともつかないその表情に少し棘を感じて桜は少し怖くなった。
何故自分ばかりが責められなければならないのか分からない桜は今までずっとしまい込んでいた気持ちに蓋をしきれなくなった。いまだイラついたように見下ろす悠次に声を震わせた。
「……部長だってっ彼女の前で堂々といちゃついてたのに、私にばっかりそんなこと言って!…本当はイルザさんの方が好きなんでしょ!?」
「はあ?何言ってんだよ」
切なさが振り切れてしまい、涙声のまま怒りをぶつける。
「もういいもん、公衆の面前でいちゃつくような破廉恥は知りませんっ!」
「おい!」
「そんな人だなんて知りませんでした!…だいたい、行動がいちいち欧米人っぽいとは思ってましたけどまさか女の人にだらしないなんて!」
「勝手なことばっか言っ…」
「女なら誰でもいいのかっ、このたらしー!」
ほぼヤケクソになって叫ぶ桜はグイグイと悠次の身体を押す。好き勝手に捲したてる桜に初めは悠次も困惑した様子だったが、度重なる暴言にとうとう我慢の限界がきた。
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