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 大事な話がある。なんとか予定を合わせられないか? 久しぶりにかかってきた樹からの電話は、要約するとそんな内容だった。  数えてみると、丸二年も連絡を取っていなかったことに気づく。最後に樹に会ったのは、大和先生の葬儀だった。  大和英一郎。"園"のみんなは専ら大和先生と読んでいた。僕が大和先生について知っていることはあまり多くはなかった。  生まれは千葉の南房総市、読んで字のごとく房総半島の先端にある。そこで幼少期を過ごした後、都内の高校に進学したのをきっかけに上京。大学院卒業までは都内で下宿をしていたそうだ。  そして、三十代に入る頃に静岡県の沼津市で孤児院「草薙の園」を設立した。  これは葬儀の時に聞いた話だが、大和先生は生後まもなく両親を亡くしていたようだ。そのため南房総にいた頃は親戚の家を転々としており、そこでもあまり良い扱いは受けなかったらしい。これにはそれなりに理由があったようだ。
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