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序章
――今でも時折、観鈴の夢を見る。
夢の中での観鈴はあの頃のまま変わらない。まるで時が経つことを拒絶しているかのようだった。
もし今、観鈴が生きていたとしたら、彼女はどんな大人になっていたのだろう。何をして生きていたのだろう。
この懐かしさは、呪いだ。
永劫消えることのない呪い。いつまでもこの躰を、精神を過去へと縛り付ける鎖だ。
この呪いがある限り、この安らぎと痛みは続く。観鈴はもういない。
彼らを殺す。そう誓った。
これは使命だ。呪いを解く唯一無二の手段だ。
彼らを決して赦しはしない。
観鈴を人として扱わず、塵芥のように打ち捨てた彼らを決して赦さない。
殺す。必ず殺す。この手で。
――あの黒鉄の箱の中で。
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