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プロローグ おまえなんか大嫌い
「人を好きになることの、何がいけないんだ」
五月の淡い星空の下。
眠たいゴールデンウィークの午後八時過ぎ。
殴り飛ばされたいじめっ子が、ごろんと地面に転がった。
しんと静まり返る、笑っていた女の子。
呆然とする、体の大きないじめっ子。
泣きじゃくるのをやめた、いじめられっ子。
「人を好きになることの、何がいけないんだよ。言ってみろ!!!」
男の子が、いじめっ子に掴みかかる。
星々がちかちかと音を立てて瞬き、
爽やかな五月の風が、男の子の柔らかな黒髪をふうわりと揺らしていた。
その風景が、今でも忘れられない。
だって、それは。
美しくて、きらきらと輝いていて。
とても苦しくて。
大嫌いな、初恋の風景なのだから。
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