酒飲みの本気

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「どうしたんだい、珍しいなあんたがそんな顔するなんて・・・ひょっとして“コレ”か?」 にやけ顔のオヤジがカウンター越しに話しかけてきたが、その手は親指が立てられていた。 「んなッ!?ば、ばかやろう!そっ、そんなんじゃねえよ!ただ、あたしって魅力ねえのかなって思っただけだ・・・」 「ほほぅ、やっぱりこれじゃねえか、まぁ、嬢ちゃんがそう思うならオヤジは野暮な口出しはしねえよ」 そう言うと真剣な顔になったオヤジだけど、なんかどっかたのしそうにしてやがる。 「だから今から言うことは爺の独り言だと思って聞き流してくれや・・・・自分に自信がなけりゃ努力すりゃいい、誰かに気に入られる努力じゃなくて、自分が自分に納得できるようにする努力だ、自分も納得できるイイ女になった時、きっとそれまでのことも、これからのこともそのどっかの誰かさんはきっと見ていてくれるはずだ、それでもまだ何も無いってんなら、きっとそいつはあんたにゃ相応しくねえ男だったってだけのことさ」 少し遠くを見てるように感じるオヤジ。 きっとこのオヤジも昔は色々なことを経験したんだろう。 「あたしが、あたしに納得できるように・・・か」 「まぁ、嬢ちゃん程の別嬪はそうはいねえから、そこまでして何もしてこねえならそいつは玉が付いてねえか、それともアッチの趣味のやつだな!」 あいつの真似して最近身に着け始めた外套の裾を不意にぎゅっと握ってしまった。
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