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翌朝、夕希は私を誘いには来なかった。
さすがに「3度目の正直」が発動して深く反省、私と顔を合わせにくい…というかわいい理由でもなければ、私の八つ当たりに嫌気がさして腐れ縁を解消したい…なんて新鮮な理由でもない。
学校について武道場の横を通ると、空気を切るような、大気を鞭打つような練習音とともに、聞きなれた掛け声が響いてきた。
幼馴染みの雄姿なんてわざわざ見たいものでもないけれど、床をける足音から夕希の調子がいいことがわかってしまう。
繰り出す拳が風を切る様子が目に浮かぶ。
ついでに、「男子空手部」に似つかわしくない美人の夕希にネタ半分本気半分で「かわいい~」なんて規格外の声援を送るおバカなギャラリーも、その緊張感粉砕の光景にもともと怖い顔をさらに限界までしかめながら頭を抱える気の毒な鬼顧問の姿も浮かんだが、後半の二つはとりあえず意識の外に押しやっておく…。
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