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「これが兎吉さんが瞳をなくした経緯だよ」
静かにナナシが語り終える。
私は涙が溢れて止まらなくなったのだが、
ナナシはそんな私を抱き寄せて頭を撫でてくれた。
「兎吉は最初俺の社にきたんだけど、俺は壊す方が得意。紐解きに依頼した方がいいからとここに連れてきた」
大黒がぼそりと言った。
心なしか元気がないのは、兎吉さんの昔話を聞いたからだろうか。
「今回、どうしてもなくなった瞳が必要になったのですが、ぬらり殿の消息が不明で、途方に暮れていたのです。私はこの通り、目が見えないから遠くに行けませんし、貧乏神様、どうかぬらり殿を見つけ出して、瞳を一時的に貸してもらえないか交渉してもらえませんか」
ナナシはしばらく考えていたが、
ぽんと膝をうって言った。
「いいでしょう。引き受けます」
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