最終章 夜をこめて

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 これは誰の声だろう、ぼやけた意識の中でそう思った。自分の声がどこから出ているのかさえ分からなかった。  ……ん。  いつの間に落ちてしまったのだろう。重たい瞼を開くと、桜井の寝顔があった。一体何がおきたのかよくわからないと思うほど昨日からの記憶が曖昧だ。  体を起こすと「いっ」と声がでた。身体中が痛い。無理に起きる必要はない、もうひと眠りするかと時計を見る。早朝だと思っていたのに既に午前九時をまわっていた。  「え?こんな時間?桜井!おまえ、起きろ!」  横で眠りこけている男を揺り動かす。  「……あ、羽山さんだぁ。本当に羽山さんだ」  寝ぼけた顔で腰を掴まれた、ベッドにずっと引き戻される。  「馬鹿、チェックアウトするぞ。電車の時間に間に合わなくなる」  首筋に顔をうずめて人の身体をすんと嗅いでいる馬鹿を押し退ける、携帯がぶるぶると震えているのだ。  『羽山、おはよう。今日、明日の有給は申請してあるし、そこのホテル二泊で予約してあるからな。昨日、桜井が来ていると伝え忘れていたから。で?俺はいいところを邪魔できたか?だとしたら嬉しいのだけれど』     
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