エピローグという名の日常

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自覚したからといって夜の行動が簡単に落ち着く訳ではないのだろうけど。それでも、母が家に居る日が出来たこともあり、今までよりは外を歩き回る頻度が減ったことは確かだった。 「最近はどう?よく眠れてる?」 「そう、だね…。昨日なんかは、お母さんも家に居る日だったし外に出ることはなかったみたいだよ。その分お母さんは大変だったのかも知れないけどね」 今朝母から聞いた話では、やはり夜中に起き出して来たとのことだった。細かなことは何も言わなかったけれど、きっと外へ出ようとする自分を何とか留めてくれたのだろう。ちょっと困ったような微妙な笑顔を浮かべていた母を思い出して苦笑する。 そんな私の様子を見ていた圭ちゃんは、何となく察したみたいだった。 「そっか…。でも前より出歩く日は減ってるみたいだし、良い傾向なんじゃないかな」 「うん、そうだね」 「桐生さんが言うように、僕も紅葉の眠ってる時の強さや素早さは知ってるから認めるけど…。でも、やっぱり心配の方が大きいからさ。前は結構怪我もしてたでしょう?」 僅かに顔を曇らせる圭に、安心させるように紅葉は明るく頷いて見せた。 「うん。でも、だいぶ良くなったよ」 以前は包帯を巻いていた左腕も今は元通りだ。その何もない腕をアピールするように軽く手を上げて見せると、圭も頷いて返した。 「…治って良かったよ。今は桐生さんたちが見回りを強化してくれてるから『打倒掃除屋』みたいな人達もだいぶ減ったみたいだけど、紅葉自身の行動パターンも読める訳ではないし。まだまだ油断は出来ないよね」 (うう、確かにそうなんだけど…) 耳が痛いと思っていた矢先、何処からか声が掛かった。
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