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夢の余韻
どうしてこんな事になったのかよくわからない。
気がついたら私は、身動きできないように紐でぐるぐると椅子に縛りつけられていた。
心臓がドキドキと高鳴る。けれどそれは恐怖のせいではなかった。こんなことをするのは彼しかいない、そうわかっていたから。
熱を帯びた吐息をため息でごまかす。そのままじっと闇を見つめていると、ようやくぼんやりと人の輪郭が見えてきた。胸が疼いて涙が出そうになる。
「龍?」
掠れた声でそう問いかけた。少し声が震えてしまう。私だけに向けられるはにかんだ笑顔。からかうときのちょっとイジワルな瞳。私の肌に溶けこんでしまうくらい熱をもった唇の感触。
龍の記憶があっと言う間に立ちあがってきて、目の前にいる人にぴたりとあてはまる。
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