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他愛無い日々 10
みっちゃんとお爺ちゃんが亡くなってから半年が経った。
我が家に設置されたお仏壇に、きれいな遺影が二人分並んでいる。
ママはいつもなにか話しかけて、途中でやめてしまう。
でも、最近は涙を流さなくなっていた。
リビングのテーブルで私と燿馬が勉強していると、ママはココアやカフェオレを入れてくれる。放課後保育で手作りしてきたクッキーの残りやマドレーヌは、毎日密かな楽しみになっていた。今日はスイートポテトだった。
「俺、栗とかポテトとかのあんまいヤツ苦手なんだけど」と、燿馬が言うと。
ママは「そうだったっけ?じゃあ、パパに取っておくから頂戴」と言って、ラップをかけて戸棚にしまった。
「すぐにご飯にするからね」と言いながら、ママが冷蔵庫を開けたらなぜか燿馬の筆箱が。
「なにこれぇ?」と、素っ頓狂な声を上げた。
お風呂に入っていた燿馬が、呼び出しのブザーを何度も鳴らし出したから、私がそそくさと駆け付けると、シャンプーの容器にボディソープが入ってると言って大騒ぎだ。
「シャンプーがいつものやつじゃないと髪がチリチリパーマになっちまうじゃん!」
「わかったから!ちょっと待って!!探してくるから!!」
私は洗面所の収納棚を開けて、燿馬専用シャンプーを探し出したら、今度はそこにテレビのリモコンが。
「なんで、こんなところに?」
シャンプーを発見して裸の燿馬に渡して、リモコンをもってキッチンに戻る。
ママが丁度、小皿につみれスープを入れて味見をしたところだった。
「うわぁぁぁ」と変な声を上げた。
「どうしたの?ママ」
「なんか、変な味なの」
私は小皿を受け取って啜ってみたら、信じられないぐらい甘い味だった。
ママは塩とグラニュー糖を間違えて入れたみたいだった。
「大丈夫!」と私が鍋を掴んで、大きなザルでこして汁をシンクに捨てた。
そしてお湯を沸かし直して昆布だしとかつおだしを投入し、酒と塩を入れてから具材を鍋に戻してしばらくの間煮込んだら、問題なく修正できた。
「えりん。頼りになるわぁ。ありがとう」とママがぽつりと言った。
私はママが心配だ。
元気そうにしているけど、心にぽっかり空いた穴が大き過ぎて胸が痛い。
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