6.GLORY DAYS

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「あ、着いたよ。ここだ」 「うわあ。なんか趣のある店構えだねえ」 木製のドアは、重厚で使い古されており、 長い歴史を感じさせる。 光正に続いて中へと入ると、 店内は程好い狭さで 常連客が数人いるのみだった。 「…お久しぶりです、豊さん」 「えっ、ば、番匠か?! よく来てくれたなあ。まあ座れ!!」 カウンター内にいたその人は、 笑うと目が糸みたいに細くなり、 とても優しそうな感じの男性だ。 利発そうな女性のバーテンと 小声で何か話したかと思うと、 まるで私達専属であるかのように 正面から動かなくなってしまった。 それを見て耳元で光正が詫びる。 「ごめん、雅。 これじゃジックリと話を聞けないな」 「ううん、むしろこの方が良かったよ。 優しい先輩だね」 …そう、これで良かったのだ。 だってあのままの状態だったら、 何と話していただろうか。 『翔から恋愛対象じゃないと 言われました』って? 『光正だけは私を女として 見てくれますか』って? 『落ち込んでいるので 慰めてください』って? …そんなこと、言えるワケない。 気持ちを切り替えるために 小さな溜め息を吐くと、 豊さんが光正にこう質問した。 「なあ、今だから訊くけどさ。 お前が刺された時のこと、 詳しく教えてくれないか?」
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