【妻の気持ちが】

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【妻の気持ちが】

「おはよう。昨日、優生いつの間にそっち行ったの?」  ネクタイを締めながらリビングのドアを開け、食事の支度をしている優香に声をかけた。  昨日一緒に寝室のベッドで寝ていたはずの優生は、いつの間にか隣からいなくなっていた。  パジャマ姿のままダイニングチェアに腰掛け、眠そうな目でスープを飲んでいる。 「おはよう。私が帰った時に、和室のほうに移動させた。寝相悪いから、ベッドから落ちるの怖くて。ごめんね、一日任せることになっちゃって」  俺は優生の隣に腰掛ける。  優香がトーストと目玉焼きをテーブルに置いた。 「お義母さん、大丈夫だった?」  カウンター越しに、優香に訊く。 「あぁ、うん。ちょっとしんどそうだったけど。洗濯と掃除してあげてたから、帰ってくるの遅くなっちゃった。ごめんね」 シンクの中の洗い物に視線を落としながら答えた言葉に、俺は「いや全然大丈夫」と返事をする。 「一日中優生と動き回ってたから、俺も優生寝かしつけながら一緒に寝ちゃってたよ」  コックを下げ、手を拭いたかと思えば優香が忙しなく動く。週のはじめ、タオルケットとお昼寝布団用のカバーをクルクルと丸め、専用にしているバッグに入れる。 「良かったねぇ、優生。楽しかった?」  眠そうにしていた優生の目がパっと明るく、光る。 「うん!あのねママ、お部屋の中にね、こんっなに大っきなレゴのキリンさんがいたの!象さんも!」  そう言って小さな手をめいっぱい広げた。 「うんうん、パパにお写真送ってもらったから見たよ。ママも行きたかったな。また行こうね」 「うん!ゆうきが案内してあげるね!」  誇らしげにそう言った息子の顔がかわいくて、俺の頬も思わず緩む。 「楽しみ」伏し目がちに優香がふっと笑い、布製のバッグのチャックを閉める。  コーヒーを飲み干し、立ち上がる。4分の1にカットされたミニトマトに相変わらず苦戦している優生を見て、優香が見ていないうちにそれをこっそり摘まみ上げて自分の口に放り込んだ。  俺のほうを見て嬉しそうに笑う優生に微笑み返し、「行ってきます」と声をかけた。 「行ってらっしゃい」二人の声が重なり、リビングを出た。
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