山城結人

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写真ばかりは自分の手で入れた。 あの二人に頼んでヘマされても困るし、丁度ヤツの靴箱はカメラの死角になっていて見えない。 生徒会室の意見箱も同じ。 加えて雑務の為にと毎日役員の誰よりも早く登校していたから、怪しまれる事は無い。 途中から昇降口に風紀の見張りが付くようになって歯噛みしたけれど、カメラの死角を通って皆の帰った遅い時間、誰も居ない隙に入れるようにした。 同時に、役員達にも個別に接触して弱々しく泣き付いた。 ヤツに気のある役員でも、僕に好きと云われて気持ちの揺るがない奴は居ない。 庶務の坂下だけは色仕掛けも泣き落としも通じる様子は無く、一度きりで距離を取ったけれど。 皆が疑心暗鬼に陥り始めた頃。 仕上げのチャンスは早くに巡って来た。 三年で、一人やけにヤツに執着している奴が居た。 そいつが放課後いつも、人気の無い特別教室棟側の中庭で風紀の目を盗んで煙草を吸ってる事も知っていた。 だから中庭にも何箇所か小型カメラを設置しておいた。 休み時間、教室の入り口の階段付近で、「放課後第二保健室に行く」と聞こえたのは偶然トイレから出ようとした時。 ヤツの教室は一番端で、階段を挟んでトイレの直ぐ横にある。 手を拭く振りをして隠れて耳をそばだてた。 「付いて行こうか」と訊く狭山にヤツは「一人で大丈夫」と答えた。
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