第1話 最悪な災厄

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その日、博物館は数多くの人で溢れていた。世界的にも有名な考古学者である広道(ひろみち)教授が発見した遺物の一般公開が始まる日で、その式典が催されることになっているのだ。 世紀の発見とまで言われたその遺物は、中東の砂漠地帯にある遺跡から発掘されたものだった。日本国内はもちろんのこと、世界各国のメディアが今日の式典の取材をしに来ていた。 政府からは大臣クラスの人間が何人か出席している。外国の要人クラスの人間も顔を見せている。 それほどまでに大きな注目を浴びている今日の式典に、地元の高校生の姿があった。広道教授が地元出身ということで、特別に選ばれた高校生たちが式典に参加していたのである。 しかし、学校から式典への参加を強制された当の高校生たちはというと──。 「なんだよ、ここからだと人の頭しか見えないじゃん。発見されたお宝っていうのは、いったいいつ見せてもらえるんだ?」 一階の広いホールにびっちりと並べられたイスに座る出紋セツヤ(でもんせつや)は、背を伸ばして一番前の舞台に目を向けた。 舞台上にはお祝いの花束を活けた大きな壺が並び、祝辞を述べる要人向けの椅子も何脚か設置されていた。     
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