理想の恋の相手

39/39
/674ページ
「七瀬さんがおかしいなら、僕もおかしいことになりますね」 「え……」 「自分のことをおかしいと言ってくる人のために、自分の価値観を曲げる必要はないと思いますよ」 「……」 「少なくとも、僕は七瀬さんと同意見ですから」 久我さんは、私を慰めるように優しく微笑んだ。 六年付き合ってきた遥希とは、全く違う。 大人の余裕と、落ち着きがある。 間違いなく私は、その優しい微笑みと語り口調に癒され始めていた。 「僕たち、きっと合いますね」 理想の恋なんて、どこにもないとわかっている。 全ての考え方や価値観が同じ人なんて、どこにもいない。 でも、自分に似ている人はきっといる。 私の理想の恋の相手は、どんな人なのだろう。 久我さんと食事をしながら、ふとそんなことを考えた。
/674ページ

最初のコメントを投稿しよう!