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街。
スズメ達が電線に留り日々を語らい、
通りには、あらゆる人々が行き交う。
この街の片隅に、猫が暮らしている。
うにゃーーーーーー!!
ふーーーーーーっ!!
みゃぁぁぁあおぅぅぅん~~~
なぁおぉぉぉぉうんんん~~~
猫同士が縄張りや食物の奪い合いでいがみ合ったり、
猫同士が跡継ぎを残す為に恋をしたり、
猫達皆様々に、各々の生活を生きている。
のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし・・・
1匹の厳つい斑模様の雄猫が、短く丸い尻尾を揺らしながら、貫禄ありげに悠々と歩いていた。
野良猫のアル。ひと呼んで、『さすらいのアル』。
幾度もの修羅場をくぐり抜け、
幾度もの試煉に挑んできた。
全身の引っ掻き傷が、野良猫のアルの生き様の証であり、プライドだった。
野良猫のアルは、平穏な日常の風景を歩く。
日常の平穏な風景こそが、アルにとってこの傷を癒す糧だった。
しかし、無頼の野良猫アルは常に修羅場を目指す。
何時死ぬか解らない毎日。
アルを狙うライバルか?
不慮の事故か?
それとも、心無い人間か?
その緊張感を和らげる、日常の平穏な風景。
「あ、」
「アルさんだ。」
「『さすらいのアル』が、この街にもやって来た。」
「お疲れさんですっ!アルさん!!」
この街の野良猫や地域猫、そして家の飼い猫も、無頼猫のアルの姿を見付けると挨拶をしてきた。
「おうよ、元気でやってっか?」
自ら厳しく、他猫に甘く。
無頼の猫、アルでも優しい声をかけてくる猫達には、笑顔で会釈する。
そんなアルのカリスマを狙って隙から襲いかかるライバルも少なからず、アルはこういう平穏な光景でも常に周りに注意を払って歩いていた。
「う~~~~~~~~ん・・・」
野良猫のアルは伸びをした。
余りにもポカポカ陽気だったので、段々眠くなってきた。
「どっか、塀の上とか休む場所は無いかニャ・・・
いや、この瞬間でも俺を狙う奴が居るかもしれニャい!!」
のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし、のっし・・・
無頼猫のアルは歩き続ける。
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