特別な日

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今日は特別な日だ。 鏡の前の自分に言い聞かす。 別に今日好きな子に告白するとか、大事な試験があるとかそういったことじゃない。 ただ、いつもより緊張はしている。 第一印象が大事だ。それに誠実な態度。 にっこり笑ってみる。 ううーん、少し硬い表情だ。普段鏡に向かって笑いかけることなど無いからだろう。 悪戦苦闘していると鏡越しに、そして僕の肩越しに視線がぶつかる。 「尚樹、大丈夫?」 母、光代。息子の異変に怪訝な表情。 心配ではなく不気味さを感じていることを少しも隠さない表情に少し傷つく。 「大丈夫。ちょっと顔の体操をさ、してただけだから」 母と入れ替わりに洗面所を出る。 「10時になったら出るからねー!キャリーも持ってよー!」 「わかってるー!」 後ろからかけられる声に大声で返事をする。 「夏菜子のうちはちょっと遠いからねー!時間厳守ー!」 まだまだ呼びかける声に適当に返事をしつつ、顔はにやけ始めている。 今日は特別な日だ。 猫を譲り受けに行く。
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